|
催破橙香薦蟹黄 快斟新酒潤詩腸 雁拖暝色横秋水 |
鴉帯寒声噪夕陽 萬事莫如花下酔 百年渾似夢中狂 |
登高休負湖山約 約買扁舟載艶妝 |
【読み】 |
橙香(とうこう)を催破(さいは)して蟹黄(かいこう)を薦(すす) |
め,新酒を快斟(かいしゃく)して詩腸(しちょう)を潤(うるお)す。 |
雁(かり)暝色(めいしょく)を拖(ひ)きて秋水(しゅうすい)に
|
横(よこた)わり,鴉(からす)寒声を帯びて夕陽(せきよう)に |
噪(さわ)ぐ。万事 花下(かか)に醉うに如(し)くは莫(な)く |
百年(ひゃくねん) 渾(すべ)て夢中の狂に似たり。高(たか) |
きに登りて湖山の約(やく)に負(そむ)くことを休(や)め、 |
約(やく)して扁舟を買い艶妝(えんしょう)を載(の)せん。 |
【意味】 |
橙の香りを楽しみながら、蟹味噌を味わい、新しいお酒をたっぷり |
注いで、詩を作るための気分を潤わそう。雁は夕暮れの色を引き |
ずりながら秋の川を横切り、カラスは冷たい風に声を乗せて、夕日 |
に向かって騒いでいる。何事も花の下で酔うことに勝るものはなく、 |
人の一生はまるで夢の中で狂ったようなものだ。高い場所に登って、 |
美しい湖や山を見る約束を忘れることなく、小さな船を買って、 |
美しい装いの佳人を乗せて漕ぎ出そう。 |
|
*催破…(楽しみを)強く促す *蟹黄…蟹の内臓、蟹味噌の部分 |
*快斟…楽しく酒を酌む *艶妝…艶やかな美人 |
|
【出典:秋寓都城次趙君瑞韻(葛起耕・宋)】 ) |
秋、都城に寓し、趙君瑞の韻に次ぐ |