披繡闥 俯雕甍 山原曠其盈視 川澤盱其駭矚 閭閻撲地 |
鐘鳴鼎食之家 舸艦迷津 青雀黃龍之軸 虹銷雨霽 |
彩徹雲衢 落霞與孤鶩齊飛 秋水共長天一色 |
漁舟唱晚 響窮彭蠡之濱 雁陣驚寒 聲斷衡陽之浦 |
【読み】 |
繡闥(しゅうたつ)を披(ひら)き、雕甍(ちょうぼう)に俯すれば、 |
山原 曠(こう)として其れ視に盈ち、川澤(せんたく) 盱(く)と |
して其れ矚(しょく)を駭(おどろ)かす。閭閻(りょえん)地を |
撲ちて、鐘鳴(しょうめい)鼎食(ていしょく)の家あり。 |
舸艦(かかん)津に迷いて、青雀(せいじゃく)黃龍(こうりゅう) |
の軸あり。虹 銷え 雨 霽れて、彩 雲衢(うんく)に徹し、 |
落霞(らくか)と孤鶩(こぼく)と齊(ひと)しく飛び、秋水長天と |
共に一色なり。漁舟晚(くれ)に唱いて 、響き彭蠡(ほうれい) |
の浜を窮め、雁陣 寒に驚いて 聲 衡陽(こうよう)の浦に |
断(た)ゆ。 |
【意味】 |
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を余すことなくいっぱいに立てられ、人家も多く、中には鐘を |
鳴らして人を集め、鼎をならべて大勢の人が食事をすると |
いう大きな家もある。大船や軍艦が大川に満ち、船着き場も |
わからないにぎわいで、それらの船はみな青い孔雀や黄色 |
の龍の飾りが舳先につけられて美しい。虹が消え雨が晴れ |
ると、陽光は雲の通い路に照りつらぬき、西の空には夕焼雲 |
が、、一羽の野鴨と共に飛び、秋の水は果てしない空と共に |
一色になっている。夕暮れ時に船で漁師が歌を唱うと、その |
響きは彭蠡の浜の続くかぎりに伝わり、雁の列も寒さに驚い |
て、鳴く声が南方の衡陽あたりに断えて聞こえなくなる。 |
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*雕候…飾り彫りのある煉瓦屋根 *曠…注目して目をはなさない |
*閭閻…村里 *鼎食…鼎を並べて大勢の人が食事をする |
*舸艦…大船や軍艦 *雲衢…雲の通り道 |
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【出典:秋日登洪府滕王閣餞別序(王勃・初唐)】 |