秦時樓堞漢家營 匹馬高秋撫舊城 鞭石千峯上雲漢 |
連天萬里壓幽並 東窮碧海羣山立 西帶黃河落日明 |
且勿卻胡論功績 英雄造事令人驚 |
【読み】 |
秦時の樓堞(ろうちょう)漢家の營(えい) 匹馬高秋(こうしゅう) |
旧城を撫(な)でる 石を鞭(むちう)って千峯 雲漢に上る 天に |
連なる萬里 幽並(ゆうへい)を圧す 東は碧海を窮(きわ)め |
群山 立ち 西は黄河を帯び落日明らかなり 且つは胡を |
卻(しりぞ)ける功績を論ずる勿(なか)れ 英雄 事を造(な)す |
人をして驚かしむ |
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【意味】 |
秦が全土を統一して長城を築き、漢朝もここに砦を築き兵を |
配置して守った。秋たけなわのころ、私は単身 馬に騎って |
八達嶺城関にきて、国土を一望した。巨大な石を鞭で打ち、 |
千の峰に乗せ、大空に追い込み長城を造ったという。天に |
連なる万里の長城は幽州と並州を威圧しているようにみえる。 |
東には青い海に囲まれた山々がそびえ立ち、西には黄河の |
流れに夕陽が輝く。万里の長城の胡を退けた功績だけを論じ |
ないでほしい。これを築いた英雄こそ人を驚かせたのである。 |
(万里の長城の胡を退けた功績より、これを築いた英雄の |
功績のほうが大きいことを言っている) |
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*樓堞…長城 *漢家…漢朝 *舊城…八達嶺城関 |
*高秋…晴れ渡って空の高く見える秋。秋たけなわの季節。 |
*鞭石…晉伏琛の『三齊略記』に「始皇帝は日の出る場所を見るために |
海を渡る石橋を作った。 その時、神が現れて石を海に導くことができた |
のだと。石が十分に進まないと、神が石を鞭で打つので、石はみな血を |
流し、今も赤く残っている」とある。ここではその古事を引用している。 |
神は無数の石を鞭で千の峰の頂に追いやり、まっすぐ天に導いたようだ。 |
*幽並…幽州と並(并)州 *且…今のところ。今は。ひとまず。 |
*造事…万里の長城を築いたこと |
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【出典】登萬里長城(清・康有為) |