不愧衰翁雪鬢新 出門也復整烏巾 梅花隔水香撩客 |
野鳥穿林語喚人 長日難消惟泥酒 災年不死又違春 |
吾兒已到新安未 想掬清溪洗客塵 |
|
【読み】 |
愧じず 衰翁の雪鬢 新たなるを 門を出で 復(また)烏巾を |
整うなり 梅花 水を隔て 香 客を撩(かす)め 野鳥林を |
穿って 語 人を喚ぶ 長日 惟 泥酒 消え難し 災年 死せず |
又 春に違(たが)う 吾兒(ごじ)已に新安に到や未だしや |
清溪を想い掬(すく)い 客塵を洗う |
【意味】 |
年老いて雪のような白髪が出始めたが恥ずかしいことは無い。 |
家の門から出て頭にかぶった黒頭巾を直したりする。 |
川向こうの梅の花が清き香りを旅人に吹き送り、野辺の |
鳥は林の中から人を呼ぶように鳴いている。一日中 深酒 |
の酔いが消えず、昨年は災難の多い年であったが死ぬことも
|
なく、また今春もかわらず過ぎていく。我が子はすでに新安に |
着いたであろうか。清らかな谷川の水を掬って旅の塵を洗って |
やりたいものだ。 |
|
*衰翁…老人 *雪鬢…白髪 *烏巾…隠者がかぶる黒頭巾 |
*災年…凶年 *新安…地名 *粲然…光輝くさま |
|
【出典:二月三日春色粲然歩至湖上(陸游・南宋) 】 |