| 数朶奇峰列画屛 参差泉石暢幽情 青茅旋㔶尖頭屋 |
| 黄葉頻煨折脚鐺 雲合暮山千種態 鳥啼春樹百般聲 |
| 世間出世閒消息 不用安排總現成 |
| 【読み】 |
| 数朶(すうだ)の奇峰 画屛を列(つら)ね、参差の泉石 |
| 幽情を暢ぶ 青茅 㔶(くら)を旋(めぐ)って頭屋に尖る。 |
| 黄葉 頻りに煨(うい)する折脚鐺(せつきゃくしょう) |
| 雲は合(がっ)す 暮山千種の態 鳥は啼く春樹 百般 |
| の声 世間出世 消息を閒(うかが)う 安排(あんばい) |
| 用いず総べて現成(げんじょう) |
| 【意味】 |
| まわりの幾つかの高峰は美しい屏風を連ねたようであり、庭には泉と |
| 石が入り混じって静かな心情がひろがる。青い茅が倉をめぐって屋根 |
| のあたりに尖っている。黄葉を頻りに折脚鐺で燃やす。雲は夕暮れ |
| の山に重なり、かぎりない面白さを呈し、鳥は春の木々に様々な声 |
| で鳴く。人の世は生まれたら皆死んでいくのだ。だからうまくやろう |
| と思わなくてよい。何事も自然に出来上がっているのだから。 |
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| *㔶…倉 *煨…物を熱い灰の中に入れて焼く |
| *折脚鐺…脚の折れたあしがなえ(釜、なべ) |
| *安排…うまく処理すること。 *現成…自然に出来上がって |
| いること。 |
| 【出典:山居十首 其二(元・釋明本) 】 |