| 匹馬平生汗漫遊,如今寂寞老林楸。小窓半夜青燈雨 |
| 幽樹一庭黄葉秋。懶看世情寧睡去,怕傷時事莫吟休 |
| 寒蛩可是知人意,未到莎根只説愁。 |
| 【読み】 |
| 匹馬(ひつば)平生(へいぜい)汗漫の遊、如今(じょこん)寂寞たり老林の楸 |
| (ひさぎ)小窓半夜 青燈の雨、幽樹一庭 黄葉の秋、世情を看るに懶(ものう)く |
| 寧ろ睡(めむ)り去らん、時事を傷(そし)らんことを怕れ吟じ休(や)むなかれ、 |
| 寒蛩可(あ)に是(これ) 人意を知らんや、未だ莎根に到って、只(ただ)愁いを |
| 説(い)わず |
| 【意味】 |
| 一匹の馬のような私は、常日頃 気の向くまま諸方をまわって遊んだ。今は寂し |
| く古い森にひっそり生える楸のようにくらしている。夜半 灯火ともる窓辺に雨が |
| そそぎ、庭には樹が深々と茂りまさに黄葉の秋である。世俗のことを考えるの |
| も うっとうしく、眠っている方がましだ。世の出来事を批判すろことを恐れて詩 |
| を吟じることをやめる必要などない。晩秋に寂しく鳴くコウロギは人(わたし)の |
| 気持ちなど知るはずもなく、只 はますげの根元で悲しみを詠(うた)おう(訴え |
| よう)ともしていない。 |
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*匹馬…一匹の馬 *汗漫…はるかに広い様子 *楸…植物名
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*傷しる…批判する *可是…豈是(反語) *莎…はまずげ
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| *愁いを説う…悲しみを言う、詠う、訴える |
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| 【出典】 夜坐(真山民・北宋) |
詩全体の読み・解釈は緑水の勝手な解釈も入っています。
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