昔遊三峡見巫山 見畫巫山宛相似 疑是天邊十二峰 |
飛入君家彩屛裏 寒松蕭瑟如有聲 陽臺微茫如有情 |
錦衾瑶席何寂寂 楚王神女徒盈盈 |
【読み】 |
昔 三峡に遊んで巫山を見る。画(えが)くを見るに巫山 宛として相似たり。 |
疑うらくは是れ天辺の十二峰、飛んで入る君が家の彩屛の裏。寒松 蕭瑟 |
声あるがごとく、陽台 微茫 情あるがごとし。錦衾(きんきん)瑶席 何ぞ |
寂寂たる。楚王 神女 徒に盈盈。 |
【意味】 |
われ、昔 三峡に遊んで巫山を見たが、今 巫山の画を見れば如何にもよく |
似ている。かの天辺の十二峰がそのまま飛んできて、君の家の彩屛に入っ |
たかと思うばかりである。さて画中 見るところは、寒松は蕭瑟として 颯々の |
声あるがごとく、陽台はぼんやりかすんで心があるようである。錦の衾 瑶の |
席 かの楚王の夢の名残は、もとよりその跡なく、ただ盈盈たる神女の姿を |
思うばかりである。 |
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*巫山…楚の懐王が見た夢を題材にした宋玉の「高唐賦」に登場する。その |
内容は巫山の神女が懐王と夢の中で出会い、親しく交わるというもの。なか |
でも、朝には雲に、夕方には雨になって会いたいという神女の言葉が有名。 |
*宛として…よく似ているさま *寒松…冬の寒気に堪える松 |
*陽台…巫山の丘 *揺席…美しい牀 *盈盈…女性の容姿の美しく |
しなやかなさま。 *元丹丘…李白が30歳ころ交際していた道士 |
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【出典】観元丹丘坐巫山屏風(盛唐・李白) |
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